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ユーザー使用事例

ジオラマ作家の金子辰也さんが弊社におみえになりました!

先日、とあるご縁からジオラマ界の第一人者として模型の世界では知らない人はいない、と云われる金子辰也さんがヒイトカッターを30年以上ご愛用頂いているヘビーユーザーだったことが判明、主にスタイロフォームで作られるジオラマの地面や水面の形状を加工するのに使用されるとのことで、そうした使い方をユーザーの方に伺いたかったこともあって「もし可能であれば工房に一度お邪魔させて頂いて、そうした活用方法のお話を伺えないでしょうか?」とお願いしてみたところ「新しいヒイトニードルにも興味があるので伺いますよ」と、逆に弊社までお越し頂くこととなり、2023年11月の半ば、その日がやってきました。
 
 
ヒイトカッターの発売は1983年、金子さんが模型専門誌にモデラーとしてデビューされたのはそれに先立つ1977年で、ヒイトカッターを買い求められたのは東京銀座の伊東屋さんでとのこと。本当に発売当初から30年以上お使い頂いているわけです。
ちなみにヒイトカッターは現在オンラインストアでの販売が殆どですけれども、発売当時は一般の工具店や文具店、ホビーショップなどでも取り扱って頂いており、銀座の天賞堂さんや渋谷や池袋、大阪吹田の東急ハンズさんでもお取り扱い頂いていました(今でも頼めば取り寄せしてくれると思います…が、直接オンラインストアでご注文頂いたほうが早いです)。

さてスタイロフォームでの地面や水面の造形とはいったいどのような物なのか、これまでじっくり作品を拝見する機会がなかったので事前にネットで調べてみると、2006年に発売された「金子辰也ダイオラマ・スタイルブック」という本に行き当たりました。
この「金子辰也ダイオラマ・スタイルブック」、月刊アーマーモデリング誌で連載されていた『ニューキット・オン・ベース』の為に製作されたジオラマ35作品をまとめたもので、さっそくこの本を購入して読んでみるとこれが本当に凄い。
ぬかるんだ道路の轍、泥で濁った水たまり、砲撃で地面に空いた穴、さざ波立つ海面、それらは本当に濡れているんじゃ?水が溜まっているのでは?と思わせるくらいリアルな造形、残念ながら誌面をコピーしてお見せするわけにいかないのですが、正直この下地があの水色のスタイロフォームを削り込んで作られているとは到底思えませんでした。

「こうした造形は粘土を盛って形作るのだと思っていましたが」と尋ねたところ、粘土は厚く盛ると時間が経ってから亀裂が入ったり割れて剥がれてしまったりすることがあります、とのこと。
確かに盛った厚みに差があると、乾かす間にも収縮率の違いでそこから歪みが出そうです。それにボッテリと盛ればそれだけ重くもなりますね。
ではどうしているのかと云うと、スタイロフォームに地面・水面の造形をヒイトカッターを使ってしっかり作り込み、その上に石粉粘土を指で薄くなすりつける様に塗りつけて表面を作っていくのだとのこと。
具体的には、と用意しておいたスタイロフォームのボードで実演して頂きましたが、U型ニードルで平らなボード表面を鱗のようにこそげ取っていくと、見る間に細かく波打った海面になります。


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左:お願いして実際にやってみて頂きました。 右:表面を軽く削ぎ取っていきます。
左:次々に削ぎ落としていくと… 右:さざ波が立ったような海面になっていきます。
左:次々に削ぎ落としていくと… 右:さざ波が立ったような海面になっていきます。

左:次々に削ぎ落としていくと… 右:さざ波が立ったような海面になっていきます。
左:スッスッと撫でるように… 右:U型ニードルのカーブがちょうどよい感じ。
 
次に、今度はU型ニードルをボードに上から真っ直ぐ差し込んで、角度を変えて動かしながら掬い取ったものを裏返してボードに置くと…
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U型ニードルを縦にして振るように切り口の厚さを変えて彫り込んでいるのが分かります。

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左:カッターなどで削ったものと違って柔らかいラインのカットが容易にできる。
 右:地面などに粘土を薄く盛る前にスタイロ表面 にスジ状のモールドを付けることで粘土の喰い付をさらに良くする事ができる。

地面などの場合、U型ニードルをチョンチョンと当てて表面に凹凸を作ります。「こうすることで上に塗った石粉粘土がボードへしっかり食いつき剥がれなくなります」。なるほど、薄く伸ばした粘土がニードルで加工されたスタイロ表面に連続する溝に噛み合って物理的に強度を出すわけですね、こういう使い方は初めて見ました。

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スタイロに細かい溝が入りました。そしてここに石粉粘土を擦り込むと粘土がベースにしっかり固定される、というわけです。

という様に、この彫り込みができるU型ニードルなくしてジオラマの造形はできません、というくらい変幻自在に駆使して製作されている一端を間近で見せて頂くことができました。

現在5種類あるヒイトニードルのうち、最も使われているのは文字や形の「切り抜き」に使われる直線ニードルです。ストアからのセット発注の際にも「ストレート、U型、L型の3タイプではなくストレート3本にして欲しい」という要望が付いていることもあって、L型や、U型系ニードルのご注文は直線ニードルと比べると少ないのですが、その半面少ないながら「U型じゃないとダメ」「L型が使いやすい!」と熱烈に支持してくれるユーザーさんもいらっしゃいます。
前にご紹介した「しちのへ秋まつり」の龍のうろこ造形もそうでしたが、金子さんもそうしたU型ニードルの使い手だったわけで、こうして実際の使い方を見せて頂けるのは本当に参考になりました。

main_007b.jpgさてさて、今回金子さんがご来社下さったもうひとつの目的は、新しく発売したU06型U12型のニードルに興味を持って頂いたことです。
従来のU型ニードルは先端のカーブの直径が25mmでしたが、U12型ニードルはカーブ直径12mm、U06型ニードルは6.5mmと細く小さくなっていてこれまでと異なる形状で彫り込めます。さっそく先程のボードの端切れで試し切りしてみて頂いたところ、はやり従来のU型とはまた別の造形が出来そう、とのことで、実際のジオラマ造形でも役立つかどうか試用して頂けることになりました。

ともあれこうしてヒイトカッターの筋金入りのご愛用者から直接、貴重なご意見を伺えたのは本当に参考になりました。一連の作品を拝見したことでジオラマに興味が湧き、今更ながらヒイトカッターを使って自分でも作ってみたい、という気持ちになっています(笑)。
 
サインを頂きました!
本にサインをお願いして、ヒイトカッターもずうずうしくサインを頂戴しました。これはどこかに飾らなきゃ
 

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